ふくしのおもちゃ箱

おもちゃと療育、障がい児や高齢者福祉、ときどきウクレレ

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きょうだい児へのストレス。結婚への影響を考え逃げたくなる人もいるけれど。

   

先日、Eテレ「ハートネットTV」でNHKハート展の特集を放映していました。
「あやまれない」・「目を閉じてみた」の2作品が紹介されていて、このうち、「あやまれない」の詩を書いた15歳の三浦蓮さんと弟さんの関係について思うことがありました。

 

素直で優しい子

 

蓮さんは生まれつき、スタージ・ウェーバー症候群という難病があり、皮膚の赤いアザが病気の特徴なのだそうです。
蓮さんの場合、右半身の麻痺や軽度の知的障がいがあるそうです。

 

東京都立鹿本学園という特別支援学校にスクールバスで通っています。
蓮さんは周りの人とのおしゃべりが大好きで、学校の先輩には「優しくて、話していても楽しい子」「怒ったところを一度も見たことがなく、後輩にも優しい子」と評価さえています。

先生にも「人にいやなことをしない素直な子」と思われています。

 

そんな蓮さんが詩の中で書いている「あやまりたいこと」とは一体何かというと・・・。

 

きょうだい児に嫉妬してしまう

 

障がいのある子

 

三浦蓮さんには9歳離れた弟の心(しん)くんがいます。

蓮さん弟の心くんに苛立ちを感じていて、普段から喧嘩が絶えないのだそうです。

ひどい時では、心くんに手を出すこともあるのだそう。

心くんが何もしていないのに、イライラしている時は、足をいきなりつかんだり、転ばせたりもします。

言葉も激しくなって、「心なんてなくなればいい」と言うときもあるのだそうです。

 

弟を受け入れるまで

 

蓮さんは、10万人に一人と言われるスタージ・ウェーバー症候群という難病を患ったわけですが、7歳になるまで、脳や目など、11回にわたる大手術を受けました。

ご両親は懸命に療育に取り組んでいたそうです。

蓮さんは、ご両親の愛情を一身に受け、穏やかな性格に育ちました。

しかしその状況が9歳のときに弟の心くんが生まれて一変したのだそうです。

蓮さんのお母さんは、「弟の誕生がきっかけで、こんなにも嫉妬の感情が出てくるんだ」と思ったそうです。

同じ部屋で寝るのを嫌がり、写真を一緒に写るのも嫌がる。

「心なんて生まれてこなければよかった。また病院に返してきてよ」と弟を否定する言葉が出てくる。

 

そんな蓮さんが書いた詩「あやまれない」は、弟の心くんへ向けた「あやまりたいのにあやまれない」という複雑な心が反映されているようです。

 

時間をかけてゆっくりと受け入れられるように

 

番組は、蓮さんが心くんに歩み寄りを見せていくところで終わります。

番組の取材後、蓮さんと心くんはほとんど喧嘩しなくなったそうです。

詩に自分の気持ちを書いたこと、それをまわりの人が読んでくれたことが、蓮さんに変化をもたらしたのでしょうか。

 

スクールバスを心くんに見せてあげたいと言う蓮さん。

支援学校のバスは大きくてかっこいいので、心くんが喜ぶと思ったのかもしれません。

 

きょうだい児の気持ちも大切

 

三浦蓮さんのように、歳が離れている兄弟の形もありますが、年齢が近い場合もあります。

何かと障がいのある子に手がかかり、きょうだい児が疎外感を感じてしまうケースもよく言われていることですね。

また、学校などで、障がいのある兄弟姉妹のことをいろいろ聞かれたりすることもあるでしょう。

親なき後の責任や遺伝のことなどを考えて、将来を悲観するきょうだい児の話もよく聞くところです。

 

 

我が家では、ムスメが一人なわけですが、下の子はあえて望まないことにしました。

自閉症スペクトラムゆえなのか、赤ちゃんの頃から、それはもう手がかかるムスメでした。

下に兄弟姉妹がいたとしても、お世話できる自信がなかったことが正直なところです。

自閉症スペクトラム障がいと診断がついてからはなおさらに、下の子が健常の子と生まれたとしても、上の子中心の生活になってしまいそうで可哀想だという思いもありました。

子どもの頃から一緒に育っても、若乃花と貴乃花のように大人になってから疎遠になってしまう兄弟もいるくらいなので、一人っ子であることに特に問題も感じませんでした。

 

 

現在の日本の福祉の状況で考えるなら、障がいのある人が自分の兄弟姉妹であったとしても、親なき後に、必ずしもそのきょうだいが面倒を見たりする必要はないと思います。

 

子どもの頃から一緒だったきょうだいを突き放すのは辛いと考える人もいるかもしれませんが、親以外に責任が及ぶべきではないし、ある程度の年齢で施設に入所している障がい者の方はたくさんいらっしゃいます。

 

ムスメと同い年で一緒に療育を受けていた重度の自閉症の子は、就学の年齢になったら、月に何度かは週末に施設のショートステイを利用してお泊りの経験を積んでいます。

その子のお母さんに聞いた話では、施設の空きはなかなかないけれど、施設をショートステイなどで何度も利用していると、成人になってから入所の機会を得やすいのだそうです。

施設側も、その子を小さい頃から把握していて、施設内で問題なく過ごしていることがわかっていると、空きがあったときの入所しやすくなるようです。

 

入所の優先度は施設によるのかもしれませんが、私が以前、勤務していた放課後等デイサービスで出会った子も、支援学校の高等部に在籍している言葉の話せない重度の自閉症でしたが、ショートステイで何度も利用していた施設に空きがあったときに、支援学校を途中で退学して施設に入所しました。

 

「施設に空きがない」という話は本当によく聞く話ですが、「この子は将来、誰かのお世話にならなければ生きていけない」と親が悟った時点で、福祉サービスにつなげていき、家族以外の人とも過ごす経験を積んでいくとよいのかもしれません。

子ども可愛さに、「自分の子どもをよそに預けるなんて!」と思い、福祉のお世話を受けつけない親御さんもいらっしゃいますが、兄弟姉妹がいる場合、その子たちが成長したときに不安を与えてしまうことになります。

デイサービスやショートステイなどの福祉サービスも、その子の特性に合わないところと巡りあうことも多々あるかもしれませんが、いろいろなサービスを使ってみて、よりよいサービスを探していく手間も惜しんではならないのだと思います。

親は障がいのある子だけでなく、きょうだい児に対しても、幸せにしてあげる責任があります。

 

もちろん、子どものうちは、障がいのある子もそうでない子も兄弟姉妹が仲良く過ごせる環境を整えるのも大切です。

仲良く育ったきょうだいだったら、将来、施設入所した後も、「元気にしているかな?」ときょうだい児が施設を訪ねに来てくれるような関係が保てるかもしれませんね。

 

きょうだい―障害のある家族との道のり

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