高齢者施設で人気のおもちゃ
私は現在、高齢者施設のレクリエーションを担当しておりますが、元おもちゃ学芸員としては、レクリエーションにおもちゃを取り入れたいと、入職した当初からずっと思い続けておりました。
職場における発言権の強さというのは在職年数とともに増してくるものかと思いますが、最近ようやく、ほんの少しの主張は通るようになってきました。
なので最近になってようやくおもちゃを持ち込む機会を得ることができたのでした。
おもちゃに対する高齢者の反応
私が勤務する施設は多くて40人程の利用者さんがおり、高齢者とひとくくりにしたところで、多種多様な方がおられます。
脳梗塞による後遺症などで高齢者施設を利用することになった50歳代の高齢者とは言い難い方もおり、そういった方は高齢者向けのレクでは物足りなさを感じていたりします。
できるだけ多くの方に満足していただけるレクを提供しようと思うわけですが、利用者さんのADLの状態によっても反応は変わってきます。
おもちゃを提供した時、ADLが高い方ほど楽しめるおもちゃの種類も多くなるわけですが、ある方には向いているおもちゃも、他の方には向いていなかったりということが当然おきてきます。
おもちゃを提供する前に、「どの方にどのおもちゃを提供するか」ということを分析しなければなりませんが、おもちゃのことをよく知っていて、なおかつ利用者さんのこともよく理解していなければならないとなると、おもちゃを提供する人は限られてしまいます。
職員の少ない私の職場では、40人の方に適切におもちゃを提供するということは難しいことでもありました。
なので、私が試みた高齢者へのおもちゃを提供したレクリエーションは、大成功とはいきませんでしたが、いくつかのおもちゃを触っていただき、「これはダメだったけど、こっちはいけそう」といった気づきを得ることができました。
全体的にウケたおもちゃというのはありませんでしたが、ADLの状態やそれぞれの趣向に合わせて提供を試行錯誤しているうちに、特定の方のよい反応を得られたおもちゃというのはありました。
賛否両論のおもちゃ
グッドトイにも選出されているレインボースネーク(虹色のヘビ)ですが、男性の高齢者には評判が良かったです。
しかし、女性の方は、「ヘビ」というだけで嫌がる方もおり、絵が抽象化されていようとヘビはヘビと受け付けない方が何人かおられました。
ヘビをつなげていくだけなので、ルール自体は簡単で、プレイされた方の理解が早かったゲームです。
男性の方や、こだわりの強くない女性の方なら向いているようです。
女性に評判がよかったのは、カクタス(サボテンバランスゲーム)で、こちらもグッドトイに選ばれたおもちゃです。
パーツを穴にさしていき、サボテンを完成させるというシンプルなおもちゃですが、見た目の可愛さもあり、皆さん楽しんで取り組んでいました。
ただ、大きなテーブルだと、手が届きにくかったりするので、テーブルや席の配置に配慮して取り組む必要を感じました。
高齢者には向かないと感じたおもちゃ
高齢者の多くは「昔のことはよく覚えているけど、新しいことを覚えるのは苦手」なので、おもちゃを提供するときは、「どの程度新しいことを覚えられるか」にかかっているように思います。
幼児ができるおもちゃだから大丈夫と思ったものも、ルールを把握できないことが多々あります。
普段、ADLも高く、しっかりしているように見える高齢者の方でもこの傾向があります。
例えば、ごきぶりポーカーは私の娘も幼稚園の頃からできたし、70代後半の私の母もできたので、「大丈夫かな」と思って提供したら、ほとんどの方が理解できませんでした。
誰かを負けさせるために仕掛けていくゲームなので、とても面白いゲームなのですが、誰かに「ウソ」か「ホント」かを当てさせるというルールがどうしても理解できないようでした。
高齢者のアクティビティ・トイにも選ばれているお月さまバランスゲームですが、カクタスと違って、出来上がっていく楽しさがないせいか、いまいち盛り上がらなかったです。
サイコロで出た目の色を積んでいくわけですが、その色が場からなくなったときに、場に出ている色が出るまでサイコロをふるというイレギュラーなルールがあることも受け入れられない要因でした。
お月さまバランスゲームはバランスゲームのわりにそんなにゆれないので、パーツは小さいけどぐらぐらゲームくらいにグラグラすると楽しいのでしょうか。
結局、高齢者に向いているおもちゃとは?
ルールのあるゲームなら、順番通りに進んでいき、複数のルールが存在しないようなものが高齢者には向いているようです。
ごきぶりポーカーのように、自分の隣りにいない人にも関わることがあったり、お月さまバランスゲームのように、「色がなくなったとき」というイレギュラーなルールがないようなシンプルさが求められているようです。
けん玉などのスキルトイはもってのほかだし(そもそも何かをじっくり練習できるような人はデイサービスには来ない)、みんなでやるゲームなら昔からの知識でできる、トランプが一番のようです。
以前、特大のトランプについてこのブログでも書きましたが、特大のトランプで七ならべをするのが高齢者施設の定番ですね。
対戦相手を確保できるのであれば将棋や囲碁。
なかなか将棋や囲碁の相手をして下さるボランティアが見つからなかったりするわけですが、デイサービスは入浴など、いろいろな時間が決められているので、時間内に対戦を終わらせることも難しく、将棋や囲碁をやる方は、一日にお一人いるかいないかくらいだったりします。
時間のかからない遊びとなると、やはりトランプに軍配があがりますね。