AERA(アエラ2019年4月29日号)伊是名夏子さんの記事を読んで
2019/06/14
少し前のAERAにコラムニストの伊是名夏子(いぜななつこ)さんの記事が掲載されていました。
伊是名夏子さんのことは、過去にこのブログでも取り上げたことがありましたが、骨形成不全症という難病でありながら、執筆に講演にと、パワフルに活躍されている方です。
人を動かす力
伊是名夏子さんは生まれた時から骨が弱く、骨折や変形しやすい体で、毎日が痛みの連続です。
そして身長が100センチほどで、移動は電動車いす。
日々、傷みと向き合い、人の助けを必要とする生活でありながら、伊是名さんはいろんなことを諦めないのです。
留学、恋愛、結婚、出産。
実現させるには高いハードルがありそうですが、伊是名さんはどんなことも、実現に向けてアイデアを考え、どんどん行動していく方です。
「障害があるのにパワフルですごいね」という単純な話になりがちですが、人の助けが必要な伊是名さんの場合、ご自身がパワフルであったとしても、まわりの人を動かす力がなければ、やりたい事を現実化するのは難しいと思います。
他人を動かすのはなかなか難しいもので、自分が希望した通りに人が行動してくれないことは、会社を経営していたり、家庭を切り盛りしていたりすると誰もが感じることではないでしょうか。
私も福祉関係の仕事をしているので想像はつくのですが、介護ヘルパーなどのサービスで、高い介護技術を身に付けたスタッフを見つけることは非常に難しいです。
それを伊是名さんは、自分でヘルパーを探し、シフト管理することで、ヘルパーの質を担保しています。
介護技術はそれほど高くなくても、人間性の高い人なら、要介護者の要求をくみとる努力を惜しまないと思いますが、伊是名さんはヘルパーの得手不得手を把握した上で要望を変えるとのことで、「要介護者が介護者の性格や能力を理解する」というアプローチをして、ヘルパーと良好な関係を築いていることが稀に見る素晴らしさだと思うのです。
介護の勉強を少しでもしたことのある方はわかると思いますが、介護者が要介護者の希望をくみとることがいかに大切かを教えられます。
介護職は一般的に、気難しい人やわがままな人の言動や行動を、広い心で受け止めてあげることを求められるのですが、それが感情労働ゆえにこの業界の離職を加速させている一因でもあるのです。
「要介護者が介護者の性格や能力を理解する」という伊是名さんの姿勢は、安定的かつ継続的にヘルパーからサービスを受けるために必要なことで、今後の介護職の人材不足を解決するヒントになり得るように感じました。
AERAの記事では、「さながら10人の部下をまとめる管理職」と伊是名さんのことを表現していましたが、安定した関係を築くために相手を理解し、自分のことも理解してもらうという、とてもシンプルなことが、「人を動かす力」につながっているように思いました。
一人になりたい時は?
伊是名さんの「人を動かす力」は素晴らしいと思いつつも、私が伊是名さんの立場だったらいろんなことを諦めてしまうような気がしています。
私は「一人になりたい」と思う時があり、一人で過ごす時間が少しでも確保されているおかげで充電され、人と関わる仕事を頑張れているようなところがあります。
伊是名さんは生活するために人の力を必要としますが、一人になりたい時はないのかなぁと、ふと思ってしまいました。
一人になれなくても、「今日は家族だけで過ごしたいな」という気分の日が私にはあったりしますが、AERAの記事で、「キャンプにはまっている」と書かれていたので、伊是名さんは大勢で過ごすのが大好きなのでしょうね。
生まれた時からずっと、人の介助なしには生きられない環境で過ごしていると、私のように「一人になりたい」なんて心境にならないのかもしれませんが、個人的には一度、伊是名さんに本音のところを聞いてみたい気がしています。
ペーパー離婚とは?夫婦別姓の意義
伊是名夏子さんは今年(2019年)3月にペーパー離婚をしたそうですが、ペーパー離婚とは何ぞやと思い、調べてみました。
ペーパー離婚とは、要するに、婚姻した夫婦が、法律上は離婚をするものの、実際の生活はそれまでどおりの結婚生活を継続していくという、書類上だけの手続きのことのようです。
何故、伊是名さんはそのようなことをしたかというと、お子さんを非嫡出子にしたくなかったので婚姻したけれど、ご自分の姓を大切にしたかったからだそうです。
夫婦別姓。
いろんな考え方があるのですね。
私の場合、名前の画数が多く、旧姓も画数が多くて書くのが大変だったので、シンプルな夫の苗字になることに、特に抵抗はなかったのですが、夫の苗字になったとたん、何故かやたらと似た苗字の人と間違って呼ばれるようになって(山田が山口や山下と間違われるみたいなこと)、「なんだかな」と思う日々です。
伊是名さんは、夫の苗字で呼ばれるたびに、違和感があったそうですが、私の場合、苗字を間違われることに違和感というか、少しの悲しさを感じています。
だからといって、あの書くのが大変だった旧姓に戻そうとは思いませんが、苗字を間違えないで覚えてくれた人のことは好感を持つようになりました。
伊是名さんの旦那さんはNHKの中野 淳(なかのあつし)アナウンサーなので、「中野」というシンプルな苗字が好きになれなかったのでしょうか。
それとも、旦那さんと対等な関係でいたかったのかな?
夫婦別姓に対する思いも、それぞれいろいろな考えがあるのかもしれません。
「違和感」以外にも、人には話していない、夫婦別姓に対する伊是名さんの思いがあるような気がしています。
伊是名さんの本が出ました!
5月25日に伊是名夏子さんの「ママは身長100cm (ハフポストブックス)」が出版されました。
残念ながら、最近バタバタと忙しくて、私はまだ半分くらいしか読めていません。
いろいろな媒体で既に知っていることも内容としてありましたが、語りかけるような文体に、伊是名さんの人柄の良さを感じました。
最後までしっかり読んだら、感想など、書けたらいいなと思っています。
関連記事(1):伊是名夏子さんに対する批判について考えてみた
関連記事(2):ハートネットTV「障害学生のキャンパスライフ」 を見て。中野淳アナが奥様との出会いを語る神回