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児童相談所はどんな所?南青山の児相問題に対する松嶋尚美さんの発言が炎上

   

ブランドショップが立ち並び、お洒落なイメージのある青山ですが、南青山に児童相談所が設置される計画があるということで、地域住民が猛反対しているというニュースが連日報道されました。

 

それについて、タレントの松嶋尚美さんがフジテレビの「バイキング」で発言した内容が炎上したわけですが、そもそも児童相談所とはどんなところだろう?ということを、この記事では掘り下げていきたいと思います。

 

児童相談所に対する世間のイメージ

 

長年、ムスメが療育を受けてきた我が家としては、児童相談所は療育手帳の判定をしてくれるところといったイメージを一番にもっています。

 

しかし、我が家のように子どもの発達が順調でなかった時期を経験しない場合は、多くの世帯にとって、児童相談所のイメージは「虐待による子どもの保護」といった印象が一番強いのではないでしょうか。

 

虐待のニュースとセットになって児童相談所の対応について報道されており、虐待件数が年々増え、それに対する報道量も増えているので、「虐待による子どもの保護」というイメージが強く印象付けられているのかもしれません。

 

松嶋尚美さんは、「親に暴行されてキーッとなっている子がボーンって外に飛び出して暴力振るったり、カツアゲしたりするかもしれない」と発言したので、児童相談所い対しても、虐待された子どもに対してそも悪いイメージを持っているのは明らかなのですが、そもそも児童相談所に保護されている子どもが脱走することは頻繁におきているのかどうかを知りたくなったので調べてみました。

 

児童相談所に併設する一時保護施設は脱走したくなる?

 

「児童相談所 脱走」で検索すると、確かにそういった事件は起きているようです。

特に、高校生くらいの子どもに多いようですが、一時保護施設の職員の目を盗むという点では、小さい子よりも知恵が働くからかもしれません。

 

脱走した子どもはお金を持っていないので、空腹を満たすために万引きをすることも実際にあったようですが、松嶋尚美さんが心配した「カツアゲ」というのも、起きる可能性はゼロではないのでしょうね。

 

ここで、児童相談所に併設されている一時保護施設は、脱走したくなるような場所なのか?という疑問が出てくるのですが、この問題については、「ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援」という本を読むとよくわかります。

 

ルポ 児童相談所: 一時保護所から考える子ども支援 (ちくま新書1233)

 

「ルポ 児童相談所」の著者の慎 泰俊さんは、自ら10ヶ所の一時保護所を訪問し、そのうちの二つに実習生扱いで住み込んでみて、子どもたちや親、職員など100人以上の方にインタビューをし、一時保護施設の現状と問題点を記録しました。

 

一時保護施設にいたことのある経験者の意見は「地獄みたいな場所」と「安心できた場所」という二つに分かれるのだそうです。

児相間の格差が大きく、設備や職員数も地域によって違うのでしょうが、問題は、「地獄みたいな場所」と思わせてしまった児相施設が存在することです。

子どもたちと「命令と服従」の関係で接するような一時保護施設は、子どもにとってストレスでしかなく、脱走したくなるのもわからないではないです。

 

私が思うに、一時保護施設は、大なり小なり子どもにとって不便なところがあっても、子どもたちは、自分の話をよく聞いてくれる職員がいる施設だったら、脱走したりはしないと思うのです。

 

子どもには、ゲームをやりたいとか、友達に会いたいとか、いろんな欲求があるでしょうが、「親身になって話を聞いてもらう」ことは、他の何ものにも代えがたいことでしょうし、虐待する親の元に育った子どもたちの多くは、「寄り添って話を聞いてもらう」ような経験が少ないと思うのです。

 

児童相談所のマンパワー不足も問題としてありますが、一時保護施設をどう充実させていくかは、国として議論し、改革を行うべきことと、切に感じました。

 

松嶋尚美さんの意見は妥当なのか?

 

監視体制のある一時保護施設が多いので、脱走が頻繁に起きるようなことはないようですが、全くないとは言い切れません。

 

しかし、「自分の子を守りたいから」という視点で語るなら、傲慢な感じは拭えないし、「親から虐待を受けた子 イコール 凶暴」と決めつけるのは、いかがなものかと思います。
松嶋さんの論点からすれば、児童養護施設も同じように解釈されてしまいそうです。

 

虐待された子に限らず、暴力をふるう子はどこにでもいます。

 

私のムスメも、左手を同じ学校の男の子に蹴られ、腫れ上がったことがありましたが、蹴った男の子は虐待というより、どちらかというと甘やかされて育った子のように普段から感じています。
すぐご近所の子なので、いろいろ家庭の状況は見てとれるのですが、飲み終わったペットボトルを窓から放り投げたり、駐輪場の自転車をドミノのように倒しまくったりと悪いことばかりしていても、親が叱ったり注意しているところを見たことがありません。

 

暴力の背景も様々だし、そして、児童相談所と関わる人々も、虐待だけでなく様々です。

 

物事は多面体なので、批判的な意見を言うときは慎重にならなければいけませんね。

 

 

私は大学で社会科学系のことを学んだので、関西出身の松嶋尚美さんが、同和関係のことでいろいろ言われていることは知っていたのですが、差別的な発言をすると、ブーメランのように自分に返ってくることを想定できなかった無知さを気の毒にも思います。

 

「利権を享受して生きてきた人だから、自分の子のメリットしか眼中にない」と、松嶋さんに対して批判する人がいるだろうな、と思っていたら、Twitterでそういうことを呟き、速攻でツイートを消した方がいました。

 

 

私は同和地区に対して差別意識は全くないのですが、結局、「いろんな人で構成する社会」という意識がないと、いろんな立場の人がお互いに傷つけあうことになってしまうのだな、と思うのでした。

 

 - 戯言