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実話「泣き虫しょったんの奇跡」が映画化!将棋界に新しい扉が開く!

   

豊田利晃監督作品「泣き虫しょったんの奇跡」を見てきました。
既に原作を読んでいた夫のススメで家族みんなで見たわけですが、ムスメはちょっと退屈な様子。

 

ムスメも将棋はたまにやりますが、将棋ファンというわけでもないので、対局のシーンになると、私にもたれかかって眠ろうとしていました。
乃木坂46のメンバーが出てきたりすると、もう少し真剣に見たのかもしれませんが・・・。
私はというと、棋士・瀬川晶司さんに対する印象が、この作品を見て大分変わったので、新しい発見ができてよかったと思いました。

 

映画より原作の方が面白い?

 

将棋ファンの夫の感想としては、「原作の方が面白い」とのこと。
Amazonのレビューを見ると、確かになかなかの高評価です。

 

泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> (講談社文庫)
泣き虫しょったんの奇跡 完全版<サラリーマンから将棋のプロへ> (講談社文庫)

 

映画では、主人公の棋士・瀬川晶司さんを松田龍平さんが演じていましたが、松田龍平さんの淡々とした演技や奨励会を年齢制限で退会するときの抽象的な映像(泥沼の中に埋まっていくようなシーン)を見て、悲壮感はわかるけれど、感情移入まではできませんでした。

 

瀬川さんは優しい人

 

夫は将棋ファンなので、それぞれの棋士のことはよく知っていますが、「瀬川さんは人が良さそう」と言っていました。

それを聞いて「ああ、なるほど」と私は思ったのですが、奨励会時代に瀬川さんの下宿先に奨励会の仲間が自由に出入りするのを許していたり、仲間のプロ入りを心から喜んであげたり、確かに瀬川さんは人がいいです。

 

しかし、そこは勝負の世界。
切磋琢磨する関係に、「優しさ」は仇となります。

 

原作は、そんな瀬川さんの「人の良さ」が溢れる文章だったので、人の心を掴む作品となったのかもしれませんね。
映画という2時間近くの長さで瀬川さんの優しさを表現しきるのは難しかったのかもしれません。

 

奨励会に入ったら一人暮らしはしない方がよい?

 

一人暮らし

 

仲間の誘いを断らない瀬川さんは、奨励会時代、いろいろな遊びに興じていきます。
瀬川さんが奨励会を年齢制限で退会する原因はそのあたりにありそうですが、そもそも、瀬川さんは独り暮らしをしなければならなかったのでしょうか。

 

瀬川さんの自宅は横浜にあります。
新進棋士奨励会(関東奨励会)は東京都渋谷区千駄ヶ谷にあります。

 

すぐ近くというわけではありませんが、電車で通えないことはないですよね。

 

藤井聡太さんが関西奨励会に新幹線で月に2回ほど通っていたことは有名な話ですが、それを考えたら瀬川さんの自宅から関東奨励会は在来線で通えます。
しかも月2回だけだったら、一人暮らししなくてもよいのでは?と思いますよね。

 

瀬川さんの部屋で、ストリートファイターをやったり、チンチロリンをやったりしていましたが、棋譜を研究したり、自分の負けた将棋を振り返ってみたりすれば、年齢制限で奨励会退会などしなくて済んだと思います。

 

奨励会時代、遊んでしまった棋士は他にもいるようで、先日、うつ病を告白した先崎 学九段も麻雀を徹夜でやっていたそうです。

 

年齢限界の26歳までにプロ棋士(4段に合格すること)になるには、いろいろな誘惑を断ち切るべきなのでしょうが、遊びたい盛りの時期の一人暮らしは自己管理が難しいのかもしれませんね。

 

瀬川さんを悪い方に誤解をしていた私

 

瀬川さんがプロ編入の嘆願をしたとき、様々なメディアがそのことを報道してしていました。
私はニュースで瀬川さんのことを知って、あまりよい印象を持っていませんでした。

 

奨励会で結果を出せなかったのに、往生際の悪い人だなぁと、勝手に思っていました。(ファンの人、ごめんなさい。)
奨励会の年齢制限でプロ棋士を諦めた人が今までたくさんいたわけだから、現状の決まりを変えてまでね、となんとなく思っていたのです。

 

しかし、この映画を見て、プロ編入の嘆願は瀬川さん一人の独断で行ったことではなく、周りからの後押しがあってのことだと知りました。
それまで、瀬川さんがプロ編入を申し入れたことを独りよがりなことと、勝手に受け取っていたのですが、「この人はプロになるべきだ」と周りに思わせるような実力と人間性が認められてのことだったのですね。

 

「ある時期は頑張れなかったけど、他の時期は頑張れた」という人はたくさんいて、例えば、学生のときは勉強しなかったけど、社会人になってから意欲が増して、勉強をするようにうなった人もいますよね。

 

誰でもチャレンジするチャンスは、年齢に関係なく設けられているべきなのかもしれません。

 

異色の経歴の人たち

 

「泣き虫しょったんの奇跡」の豊田利晃監督もまた、9歳から17歳まで奨励会に所属していたという異色の経歴の持ち主。
「王手」という映画作品の脚本を書いたこともありますが、バイオレンスな作品も多く手掛けており、勝負の世界を表現することに長けた監督です。

 

また、瀬川さんの親友・鈴木悠野(アマ名人)役にRADWIMPSでおなじみ野田洋次郎さんが出演しています。
RADWIMPSの音楽は素晴らしいですが、役者としての野田洋次郎さんも、独特の雰囲気があってよいですね。

 

音楽を元”Blanky Jet City”の照井利幸さんが担当しているそうですが、対局のシーンになると、ベースの音でジワリジワリと詰め寄っていくような曲が流れていたのを思い出します。

 

異色の才能の融合によって、「よい作品にしたい」という心意気が伝わってきました。

 

 

「諦めなければ夢は叶う!」と映画の紹介文に書かれていましたが、瀬川さんの「諦めないぞ」という意思よりも、瀬川さんを応援したくなる人たちの強い思いが描かれた作品のように感じました。

 

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