つみきの会のYoutube動画のコメント欄が批判的なこと
2019/01/31
ABA関係の動画をYoutubeで見ていたら、たまたまつみきの会の動画が関連動画で出てきたので見てみたのですが、その動画に対するコメントがいろいろ気になったので私なりの意見を書いてみたいと思います。
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気になるコメントがある動画はこちら
ある人はこの動画に対し、「犬みたい」とコメントし、他の数人がそれに反するコメントを書いています。
「犬」関係のコメントをここにいくつか紹介します。
アカウント名:都築ますみ・・・「犬みたい。」
アカウント名:コンビニの店員さん・・・「犬のしつけみたい」
アカウント名:降谷零・・・「いや犬かよ」
アカウント名:きみ ・・・「結局は、特定の人しか対人コミュニケーションはとれない子を作り上げているだけで、余計に子どもはしんどい思いをしている。指示を待つ犬と同じ」
アカウント名:!!シアンちゃん・・・「犬のしつけみたい…こんなことしなくても子どもは自分で覚えるかと…」
アカウント名:あなぱー喪服・・・「警察犬センターみたいね」
数々の「犬」発言もさることながら、「子どもは自分で覚えるかと」というコメントが特に印象的です。
この世は自分で何でも覚えられる子どもばかりだと思っている、頭の中がお花畑な方もいらっしゃるのですね。
障がいのある子の存在自体を無視している発言ではないでしょうか。
そもそもABAは犬もヒトも一緒
つみきの会は、ABA(応用行動分析)セラピーを家庭で実施するための親の会です。(ちなみに私は会員ではありません。)
今回の動画に対する批判は、ABAそのものへの批判のようですが、批判が妥当なものかどうかを考えていきたいと思います。
「鶏が先か、卵が先か」という話にもなりそうですが、ABAは犬にもヒトにも有効なもので、ABA界隈で有名な奥田健次先生も子どもの療育の傍ら、「家庭犬トレーニング合宿」なるものを開催していたりもします。
犬の他にも猫やイルカなど、様々な動物に対してABAは行われています。
ABAで療育を行っている人にとっては、「犬のしつけに似ている」と言われたところで、「だから何?」と思うことでしょう。
ヒトでも動物でも、手法が同じことぐらい、当たり前にわかっているからです。
私たち人間の行動は、動物よりも賢いことばかりを行っているかといえば、そんなこともないと思います。
たとえば、ポイントカードにポイントを集める心理なども、応用行動分析に基づいて説明されることがありますが、ポイントが集めやすく利用しやすいお店に度々足を運ぶ人が多くいるとしたら、それが人間ならではの行動といえるでしょうか?
動物は自分にとって得があることや、楽しい気持ちになることにつられて行動しますが、ヒトも同じですよね。
ABAを「犬」だと言って批判する人は、今後ポイントカードのポイントなど集めないでいただきたいし、自分にとって、一番不快で過酷な状況に向かって行動していただきたいと思います。
「餌を与えながら犬をしつける」という場面がよく知られているので、ABAを何も知らずに初めて見た人が、「犬みたい」と批判するのでしょうが、その要因としては、犬のしつけの背景に応用行動分析学があるということを、あまり一般の人が知らないからかもしれません。
「ABA」や「応用行動分析学」といったワードを入れて本のタイトルにしている書籍がたくさんありますが、それらのほとんどは子供の療育の本で、犬のしつけの本ではありません。
私は犬のしつけの歴史についてはそんなによく知りませんが、犬のしつけの本を買う人の多くは、学問的背景なんてどうでもよくて、具体的な方法がわかりやすく書いてあればよいから、あえて本のタイトルに入ってないのかもしれません。
ABAは特定の人しか対人コミュニケーションはとれない子になる?
「結局は、特定の人しか対人コミュニケーションはとれない子を作り上げているだけで、余計に子どもはしんどい思いをしている。」というコメントですが、はっきり言いますと、意味がわかりません。
自分だけの世界に入りがちな自閉症スペクトラムの子に、言葉だとか概念だとか、人と人がやりとりする上で必要なことをABAという方法で身に付けさせていく試みの中で、どこにコミュニケーション不全を加速させる要素があるのかが私にはわかりません。
幼児期にABAセラピーを受けた子どもの中で、特定の人しかコミュニケーションができなくなったという例が頻発していると言えるのであれば、その研究結果の出典を明らかにしてしていただきたいです。
ABAを行ったセラピストや両親としか関係が築けないということは全くないし、私のまわりでそのような子は見たことありません。
私はABAの手法だけを妄信しているということはなくて、療育にはいろんなアプローチがありますが、一番いけないことが子供を放っておくことだと思うのです。
たとえば、トミカの車をたくさん与えておけば、長い時間自分の世界に入って一人遊びをしてくれる自閉症の子がいたとして、一人遊びをしてくれるからといって、療育も受けずにそのままにしておくようなケースもあると思います。
また、自閉症の子でなくても、就学の年齢になってから、ルールも守らず、まわりの子が嫌がることばかりをする健常の子もいるかと思いますが、そのような子の中には、幼児期に大人が一緒に遊んであげながらルールを学ぶという経験が少ない子もいるかと思います。
母親は家事をやらなければならないし、共働き家庭やシングルマザーなど、いろいろな家庭環境があります。
大人はけっこう忙しいのですが、そんな中で、ABAであろうと、他の方法だろうと、子どもと1対1でやりとりをしてあげるというのはとても尊いことだと思うのです。
公園でスマホをいじったりしていて、自分の子どもをたまにしか見ていないお母さんを度々見たことがあります。
自分の子どもが他の子に砂をかけたり、遊具を奪ってまわりの子に迷惑をかけていることも気づかずにいて。
Youtubeのコメントを不可にしたほうがよいこともある
コメントのやりとりを見ていると、自閉症のことを知らない人たちによるヘイトスピーチ的な「犬」発言に、自閉症児の親御さんをはじめ、自閉症のことを理解している人たちが反論している様子が伺えます。
このつみきの会の動画に辿りついた方は、療育を必要としている親御さんや療育関係者が多数いると思いますが、意図しないうちに関連動画やオススメ動画に出てきて偶然見てしまった人というのもいると思います。
ABAを真剣に取り組んでいる方や、自閉症児の親御さんが、このようなヘイトスピーチを目にするのはとても不愉快なことではないでしょうか。
Youtubeは動画投稿者側の設定でコメント不可にできる仕様になっているので、このように、一般に理解されにくい動画には、コメント不可にしておくのも一つの手かと思います。
~追記~
この記事の影響なのか、現在、つみきの会の動画はコメント不可になっています。
そんなに影響力のあるサイトではないと思っているので、偶然かもしれませんが・・・。
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