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行動障害(他害)のある自閉症児の対応方法

   

私は放課後等デイサービスと通所高齢者施設(デイサービス)の両方の勤務経験がありますが、デイサービスや障がい者施設等を辞めてしまう職員の理由の一つが、利用者の行動障害(他害)にあるということをニュースなどで聞いたことがあり、それについての個人的見解を書きたいと思います。

 

子供の他害が怖いと思ったことは一度もない私。タイミングを予測する

私は2ヶ所の放課後等デイサービスに勤務しましたが、つねる、叩く等の他害のある子は最初に勤務した放デイに何人かいました。

多分、私はムスメの療育でいろんなお子さんを見てきているし、母子通園の療育センターへ行っていたこともあり、見慣れているので、特に怖いと思うこともありませんでした。
私の娘は3歳の終わりまで他害がよく見られ、それ以降は家族に対してのみ、叩いたり蹴ったりといったことがあるだけで、他人さまを傷つけるようとすることは全くなくなりました。他人さまは傷つけないけれど、パパとママには容赦ないムスメなので、かわし方がだんだん身に付いていったように思います。

「どんなときに他害が出るのか」を観察していると、どの子もそれなりの法則を見出せる場合が多いので、「他害が出るぞ」というタイミングや予兆がわかってきたりします。

ひょっとしたら、法則が見出せないケースもあるのかもしれませんが(その場合は参考にならなくてごめんなさい)、私が接していた18歳までの子は、ある程度予測することができました。

興奮している子の正面に立たない

他害 自閉症

他害のある子がどの子かあらかじめわかっていることが前提でお話します。
「この子がこんなことをするなんて!」というケースに遭遇したことがないので、普段から他害をしない子の突然の変貌については申し訳ありませんが正直わかりません。

手が飛んでくればその手を取って、足が出れば足を取ったりもしましたが、他害のある子が興奮しているときは、できるだけ正面に立たないようにしていました。
斜め後ろから背中をポンポンと優しくたたいてあげたり、必要な時は斜め前に立つこともありましたが、基本的には正面には立たずに相手の動きによく注意を払います。

私は自分が反射神経が特によいという自覚は全くありませんが、気を付けていれば、他害をかわすことはできていました。
それは身長が170cmくらいの子でも同じでしたが、それ以上に背の高いお子さんはいなかったので、ひょっとしたら180cmは無理だったかもしれないし、すべてのケースにあてはまるとは言えないかもしれません。

自分の身体にできたアザは気にしない

他害のある子に蹴られたり、ぶたれたりしたことはありませんが、それをかわす過程で腕を強い力でぎゅっと掴まれて、アザになっていることはしょっちゅうありました。

私の肩から腕にかけてがアザだらけなので、家族は心配していましたが、見た目のわりにアザはそんなに痛くもなかったので、気にしませんでした。

骨折や捻挫だったら痛みに耐えられなかったかもしれませんが、アザは「まあこういう仕事だからしょうがないか」と納得できる範疇でした。
こういった感覚は人それぞれかもしれませんね。
アザでも気になる人は気になるのかもしれません。

あと、突然つねる子というのもいましたが、つねられてもその時少し痛い程度なので、退職を考えるほど嫌なことでもありませんでした。

 

手遊びや歌が空気を変えることも

手遊び歌

他害のある子の多くは知的障がいを伴う自閉症の子が多かったのですが、その場合は手遊びや歌が特効薬になる場面が多々ありました。

いかにも悪さをしそうな手をとって、「せっせせーのよいよいよい♪」と「お寺の和尚さん」を歌って手遊びに変えていったりします。
知的障がいを伴う自閉症の子は歌の好きな子が多かったので、歌が特効薬になる場面はけっこうありました。

先にも述べたように、他害には理由があることが多く、ただ単に眠たいだけ、ということもあります。
そんなときにふかふかのクッションやぬいぐるみなど、とにかくふわふわしたものを与えて、「おかあさんといっしょ」で歌われていた「魔法のピンク」という歌を歌うとだんだん落ち着いてくる子もいました。

あと、支援学校のお迎えのときに、それぞれの学年で下校時間が少しずつずれているときがあり、車の中で待たされている子がその状況に耐えられなくて暴れることがありました。
そんなときも、好きそうな歌を歌ってあげて背中をポンポンと優しく叩いてあげると落ち着いてくれたりしました。

私は一応、子育てを経験しているので、童謡や幼児番組で歌われている歌を知っていましたが、それでもうろ覚えだったりするので、仕事のためにいろんな曲を覚えました。
ムスメが小さかった頃に「おかあさんといっしょ」でよく歌われていた「魔法のピンク」ですが、それはそれは歌いづらい曲でした。
でも、「ぱぺぴぺぽぺぴぺぱぷぺぽ ピンクのペンギン♪」といった言葉の響きと繰り返しが心地よい曲なので、一生懸命練習しました。

言葉がうまく伝えられない子が他害という形で何かを伝えようとしていることもあるわけですが、こちらがそれを察してあげられない場合、不快な気分をどうにかして変えてあげるしか方法はありませんね。

歌が効果を発揮しない場合もあるかもしれませんが、試してみるだけの価値はあると思います。

 

できるだけ痛そうにしないほうがよいけれど

私はつねられたりすると、「これはバツです」と極めて平坦な口調で言ったりもしますが、特に表情は変えないようにしています。
他害が相手の反応を楽しんでいるだけのこともあるので、大げさな反応はできるだけ見せずに、何事もなかったように振る舞います。

他害がエスカレートする雰囲気をなくすことが大切なのですが、他害以外の他の行動に意識をうつすことができるとよいです。

 

かといって、大怪我をさせられたときは、他の職員にその旨を言って、病院に行ったほうがよいです。
どうにも我慢できないような痛みもありますから、どんなときでも痛くないフリをするのは無理な話です。

私の経験で、そこまでの怪我を負わされたことがありませんが、個人的に何の対処もできないような酷い行動障害のケースは、事業所全体で話し合い、対応を考えなければなりませんね。

組織全体で考え、対応すべきケースであるのにそれをしないで個々の職員を危険な目に合わせ続けているような場合は、その組織は腐っていますから、退職を考えるのが妥当なのかもしれません。

 
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