トリイ・ヘイデンを読み返す(2) 『愛されない子』の中の自閉症児
トリイ・ヘイデン(Torey Hayden)の作品が日本でベストセラーとなったのは1996年あたりでした。
先日の記事で今、『愛されない子―絶望したある生徒の物語』(原題:Just Another Kid)を読み返していると書きましたが、今日、すべて読み終わり、彼女の自閉症児へのアプローチは素晴らしいと本当に思いました。
『愛されない子』は、日本で言うところの特別支援教室の1年間を記録したもので、本を全部読み終えると、子どもたちの成長が1年間でどのようになされたかを知ることができます。
『愛されない子』のトリイの教室には、6人の子供が在籍しますが、その中に自閉症の子は一人だけ登場し(レスリーという子)、私は特にその子に注目して本を読み進めました。
自閉症である子レスリーは、7歳でありながら、言葉を発さず、排せつも好きな時に好きな場所でしてしまうような子でしたが、トリイの指導によって、オウム返しにしろ言葉が発せられるようになり、文字を読めるようにもなり、誘導によってトイレで排せつできるようになったり、たった1年で進歩が目覚ましかったのです。
私は自分の娘が自閉症スペクトラム障がいということもあり、また、放課後等デイサービスに勤務したこともあるので、今までたくさんの自閉症の子を見てきましたが、『愛されない子』のレスリーのような短期的な成長を見せた子は見たことがありません。
トリイが自閉症の子へのアプローチとしてABA(応用行動分析学)の方法を用いていたと先日の記事で書きましたが、私の娘もABAによって文字の読み書きを習得した経験からいえば、レスリーの進歩は驚異的に思えます。
私の娘がABAによる取り組みを始めた段階は、レスリーよりもはるかに問題が少ない状態で(定型発達児と比べると程遠い状態だったけれど)、トイレトレーニングも済んでいたし、構音が少しおかしかったけれど、単語を発することはできました。
そのような段階から始めたABAで、絵本のような文章を難なく読めるようになるには1年以上かかりました。(「りんご」みたいな単語を読めるようになったのは早かったけど)
レスリーは、同じ教室のマリアナという8歳の子(知的には境界線上のIQで、学年末には7歳程度の読み書きの能力になった)と同じ教材を読めるようになったとのことでしたが、1年経たないのにこの進歩って本当に凄いです。
もちろん、英語と日本語という違いはあるにせよ、言葉を発さず、家の中をめちゃくちゃにしてしまうような子が1年足らずで簡単な文章を読めるようになるとは。。。
15年以上前、私が最初に『愛されない子』を読んだときは、トリイのABAのスキルがそこまで凄いものだとは気づきもしませんでした。
もちろん、トリイの作品は、読む人をぐっと惹きつけるものがあるので、トリイが関わった人に変化をもたらす魔法のようなところを感じてはいましたが、障がいのある子や療育について、今ほど知らなかった私は、具体的に、トリイ・ヘイデンという人間がどのように凄いのかをはっきりと言い表すことはできませんでした。
情熱的であるとか、愛情溢れる人柄だとか、ざっくりとした表現でトリイの魅力を表すことはできたかもしれません。
でも、トリイが問題を抱えた子どもたちに接した方法のどこが素晴らしかったかを、現在読み返した時のように、はっきりと見つけることができなかったのです。
そんなわけで、私が現在、再確認したトリイ・ヘイデンの魅力は連載のごとく、今後もこのブログに登場することと思います。