ふくしのおもちゃ箱

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NHK クローズアップ現代「企業が注目!発達障害 能力引き出す職場改革」を見て。作家の市川拓司さんも登場

   

先日のクローズアップ現代では、「企業が注目!発達障害 能力引き出す職場改革」という特集がやっていました。

 

 

日本の企業はなぜか人手不足と言われていますが、雇用市場にたくさん存在するという発達障害の人たちも注目されているそうです。

 

発達障害のある人たちが急速に活躍の場を広げているということで、番組ではその背景や取り組みを紹介していました。

 

企業では、障がい者の法定雇用率が上げられたことで、発達障害の人を積極的に採用する企業が急増しているそうです。

しかし一方で、発達障害者の1年以内の離職率は3.5人に1人。

 

周囲に障がいを理解されずに、仕事とのミスマッチに苦しむ人も少なくありません。

 

職場でそれぞれが能力を発揮するために必要なものは?

 

番組では、発達障害のある人の就労を支援する”Kaien”という就労支援事業所(東京 秋葉原)の取り組みを紹介していました。

 

この事業所の利用者の多くが、一度就職した経験があるものの、それぞれいろいろな理由で退職した人たちです。

 

利用者は、ここで職場でのコミュニケーションやビジネスマナーなどを学習し、再就職を目指しています。

 

企業と障害のある人とのミスマッチをなくすために、”Kaien”では雇用前実習を勧めています。

 

実際に働いてみて、企業と就職希望者が互いに仕事の内容を確認します。

 

障害の特性と、どんな作業が向いているのかを見極めていきます。

 

“Kaien”は、就職して1年後の定着率が95%を超えているという実績があります。

 

雇用をする側の企業にとって、「具体的に障がい者をどのように迎え入れればよいのかが明確」と”Kaien”の取り組みは好評です。

 

 

就労支援の枠組みで、私の職場にもよく、発達障害と思われる人たちが来ていますが、1日~2週間くらいで辞めて行く人ばかりです。

 

一緒に働く私たち職員は、就労支援として迎え入れた人が、どのような特性を持っているのかは、全く聞かされていません。

 

洗いものをお願いしたりすことが多いのですが、洗いものばかりだと、仕事としてモチベーションを保つのが難しそうな気もしています。

 

その点、番組で取り上げた”Kaien”という就労支援事業所ですが、雇用前実習で仕事の内容が明確に提示されており、障がいに対する企業側の理解も得られていて、素晴らしいと思いました。

 

発達障害者の雇用を戦略化する

 

番組では、もう一つ、発達障害者の雇用に力を入れている企業を紹介していました。

 

SNSサービスやオンラインゲームを手掛けている「グリービジネスオペレーションズ」という会社です。

 

この会社の社員の7割(36人)は発達障害があります。

 

グリービジネスオペレーションズは、以前は発達障害の社員に、資料作成やコピーなどの事務作業を任せていたそうです。
それが5年前、障害の特性を生かした経営に切り替え、事業規模の拡大につなげました。

社員の持つ能力を最大限に引き出していくために、この会社が特に力を入れているのが、発達障害の特性に配慮した細やかな環境作りです。

 

聴覚過敏で周囲の音が気になってしまう社員には、ヘッドホンを提供しています(ノイズキャンサリングかな?)。

 

電話で話をすることが極端に苦手な社員が多いので、電話を置くこともやめました。

 

さらに、1日30分の有給仮眠といった制度など、発達障害のいろいろな特性に柔軟に対応できるようにしているのです。

 

戦略↑仮眠するための設備

 

このような配慮が、最終的には企業全体の業績アップにもつながっていくものと考えているそうです。

 

 

「グリービジネスオペレーションズ」という会社名で検索したところ、あのソーシャルゲームのGREE(グリー)の100%子会社であることがわかりました。

 

私のムスメもGREEの「乃木恋」というゲームを楽しんでおりますが、そんな大手企業が発達障害者の支援につながる事業をしていたとは!

 

社長の福田智史さんは、
「福祉という意味で障がい者を雇用していると、雇用をしていること自体がが目的になりがちなんです。(発達障害者の雇用を)戦力化させることによって、(企業経営と就労が)持続可能となるっていうことが一番のポイントかなと思います。」
と話していました。

 

「雇用自体が目的になる」という論点、その通りだと思いました。

 

雇用機会があっても継続できないという状況は、発達障害に限らず存在している問題だと思いますが、「就労が持続可能になるような企業の環境作り」は日本企業全体の課題のように感じます。

 

発達障害の作家、市川拓司さんの職歴

 

番組では、発達障害の作家、市川拓司さんがゲストで登場し、ご自身の特性とともに、職歴についても話していました。

 

こだわりが強く、対人関係が苦手というところは「自閉スペクトラム(ASD)」。
多弁で多動、落ち着きがなく物忘れがひどいというところは、「ADHD」。
文字を書くのがとても下手で、文章を書くときは、紙に穴を開けてしまうくらい、鉛筆で書いていて芯の先が折れてしまうほど、ぎこちなさがあり、それは「LD」だと言われたそうです。

 

そんな市川拓司さんは大人気ベストセラー、「いま、会いにゆきます」の作者でもあります。

 

いま、会いにゆきます (小学館文庫)
いま、会いにゆきます (小学館文庫)

 

市川さんは、現在は活躍する人気作家ですが、作家になる前は、出版社で3か月、税理士事務所で14年間、会社員としての生活を経験したそうです。

 

出版社では、新入社員なのにいろいろなことをはっきりと言いすぎて上司と対立したので、「組織に向かない」と思った市川さんは税理士事務所に就職します。

 

税理士先生と、事務員が2、3人しかいないので人間関係は問題にならなかったそうですが、ADHDの特性ゆえにたくさんのケアレスミスをしました。

 

職場における理不尽なことや自分のミスのことで悩むと、その全てが、心身症として、体調に表れるようになったそうです。

 

心は折れないれも、体は折れてしまう。

 

だから毎朝、(税理士)事務所に行く途中、おなかを下してしまったり、胃が痛くなったりしたそうです。

 

心身症の状態で苦しかったときに、市川さんは彼女と結婚し、彼女が食事や香りを使ったケアなど、市川さんの体に気遣ったものを施してくれます。

 

そうすると、、次第にと自分の状態がよくなっていったのを感じたそうです。

 

 

環境を整えることで、よい状態を持続させることができるというのは、先に紹介した「グリービジネスオペレーションズ」の考え方に通じています。

 

市川拓司さんは「ダイバーシティ」という言葉を使って多様な人材を社会で認めていくことについて話していましたが、人が社会に合わせるのではなく、社会を人に合わせていくという考え方が大切なのですね。

 

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